ニワトリ
安部公房の作品に“ニワトリ”の話があったと記憶している。
嘗てニワトリは自由であったが、自由である一方で食糧の調達や天敵から身を守るため日々苦労が絶えなかった。
そこへ人間があらわれてネコなどから身を守る小屋を建ててあげようと言う。
ニワトリたちには開けることのできない鍵付きの扉がついている。
エサも運んでやるから、小屋の外へなど出る必要はないと人間は言う。人間を疑うニワトリもいるが、結局・・・
『もし問題があったらその時に話し合えばよいだろう』
という良識派が多数を占め、ニワトリたちは自ら小屋へ入ってゆく。
簡単にいうとそんな話だ。
わたしの記憶が正しければ、作品タイトルもまさに『良識派』で、ある種の良識を揶揄しているようだ。
さて、ここでのニワトリたちの失敗?は何であったのだろうか。
思うにそれはタイミングを逃してしまったこと。
『問題があったら話し合う』
これは良識ある判断というよりも、決断の先延ばしにほかならない。
しかし、タイミングを逃すと取り返しがつかないということは、この世の中しばしば・・・あるだろう。
やはり、為すべき時に為すべきことを行なわねばならぬのだろう。
ニワトリたちはもっと徹底的に考え抜くべきだったのだ。
ほどほどで妥協し、何とはなしに出した答えはやはり最良の結末へとは続かない。
最早卵を搾取され続けるしかないのだろう。
(トク丸コラム)
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