自分の感受性くらい
自分の感受性くらい茨木のり子
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難かしくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのは私
初心消えかかるのを暮しのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい 自分で守れ
ばかものよ
詩人 茨木のり子さんの作品である。昔、新聞か雑誌かで見かけて、その日のうちに書店へ行き、買い求めた。
初めてこの詩に触れたとき、『どきっ!』とした。
詩の内容に心がちりりと痛むのは、きっと私だけではないだろう。
私は弱い人間なので、躓くとすぐに人のせいにしたくなる。
そんなとき、この詩を思い出す。
自分の人生、自分の力で歩んでゆきたい。
失敗も成功もすべて自分の財産としてゆきたい。
(トク丸コラム)
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