七夕の記憶。
7月と言えば、『七夕』だ。
この時期になると思い出す“事件”がある。
小学生の頃のこと、学校の先生から『七夕の伝説』について話を聴いた。
織り姫(ベガ)と彦星(アルタイル)は一年に一度出会うことが許されるという。
誰もが知っているこのお話は、見事に無知な少年の心をつかんだ。
と言っても、ストーリーに興味を持ったわけではない。
「2つの恒星の距離が、一年に一度近づく!!」これは驚きの事実だ。
もちろんそんなわけないのであるが、少なくとも当時の私は『七夕の伝説』をそう理解した。
普段は勉強などまずしないのに、こんな時の執念だけは無駄に激しい。
家に帰り、すぐに図鑑を開く……。
次に書店へ行き、調べを続ける。
やがて、事実にたどり着く。
『ベガとデネブは16光年離れている』そして『その距離は変化しない』
・・・16光年。
光の速さで16年。
途方もない距離だ。
大きな落胆と共に悲しさが込み上げてくる。
先生にだまされたという気持ちだったのかも知れない。
翌日、泣きながらくってかかる私を持て余したのだろう。
母親が学校に呼ばれた。
まったく愚かな子供だったと思うが、田舎の満天の星空のもとで育ったせいか、七夕の伝説には実にリアリティーがあった。
『天の川』を本当に『川』と見立てられる子どもが、今どれほどいるのだろうか。
(トク丸コラム)
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